「菩提樹(Der Lindenbaum)/シューベルト」の歌詞対訳と解説【F.Schubert】(ドイツ語/日本語)和訳

「菩提樹(Der Lindenbaum)/シューベルト」の歌詞対訳と解説【F.Schubert】(ドイツ語/日本語)和訳

どうも、こんにちは!声楽家&ブロガー&ボイストレーナーのとらよし(@moritora810)です。今回はフランツ・シューベルトが作曲した連作歌曲集『冬の旅』から第五曲「菩提樹(Der Lindenbaum)」の歌詞対訳と解説をお届けしたいと思います。

この曲はとても有名な曲で、ジブリの映画の挿入歌として使われていたり、日本語の歌詞では「いず~みに沿いて~しげ~るぼだいじゅ~♪」という感じで有名です。私はドイツ歌曲を沢山勉強したので、もちろんこの曲もその中の1曲でした。演奏会でも5回以上は単品で取り上げています。いずれは『冬の旅』全曲でリサイタルができればよいですね!

それではさっそくシューベルトが作曲した「菩提樹(Der lindenbaum)」の歌詞対訳についてみていきましょう!

「菩提樹(Der Lindenbaum)/シューベルト」の歌詞対訳

Am Brunnen vor dem Tore, /市門の先、泉のそばに
da steht ein Lindenbaum,/一本の菩提樹が立っている
ich träumt’ in seinem Schatten/私はその木蔭で幾たびも、
so manchen süßen Traum./甘い夢をみたものだった。

Ich schnitt in seine Rinde/私はその幹に刻み付けた
so manches liebe Wort;/いくつもの愛の言葉を
es zog in Freud und Leide/嬉しい時も悲しいときも、
zu ihm mich immer fort./それ(菩提樹)は私を引き付けた。

Ich mußt’ auch heute wandern/私は今日、真夜中の旅立ちに
vorbei in tiefer Nacht,/その前を通らねばならなかった。
da hab ich noch im Dunkeln/私は暗闇の中だったが、
die Augen zugemacht./眼を閉じた。

Und seine Zweige rauschten,/すると梢(こずえ)がまるで
als riefen sie mir zu:/私に呼びかけるようにざわめいた:
komm her zu mir,Geselle,/「私のもとにおいで、友よ、
hier findst du deine Ruh./ここにあなたの憩いを見つけることができます。」

Die kalten Winde bliesen/冷たい風が、
mir grad ins Angesicht;/正面から顔に吹きつけ
der Hut flog mir vom Kopfe,/私の頭から帽子が飛ばされたが、
ich wendete mich nicht./私は振り向かなかった。

Nun bin ich manche Stunde/今、私はあの場所から
entfernt von jenem Ort,/ずいぶんと離れて(時間的・距離的に)しまったが
und immer hör’ ich’s rauschen:/私はいつもあのざわめきが聞こえる、
du fändest Ruhe dort!/「あなたの憩いはここにあると!」

「菩提樹(Der Lindenbaum)/シューベルト」の解説

まずこの菩提樹という曲ですが、もともとシューベルトが作曲した『冬の旅』という連作歌曲の中の一曲です。連作歌曲というのが何かと言えば、簡単に言うと「何かしらのつながりを持った歌曲集」のことです。それが、曲が進むにつれてが物語が進行していくストーリー形式になっているものもありますし、例えば同じくシューベルトが作曲した『白鳥の歌』のようにテーマや詩人に絞ったものもあります。

『冬の旅』については沢山の研究や文献があるのですが、冬の旅についてもっとも核となり押さえておきたい部分は、「冬の旅の主人公は、失恋しており死に向かって旅する(さすらう)」という点です。シューベルトの歌曲で「死」は非常に重要なモチーフと役割を果たしています。聖書の言葉にあるように、「死は若いものにとって苦いが、年老いたものにとっては甘い」ということです。少なくとも、この冬の旅にでてくる主人公は生きるのに何の迷いも無くて超ハッピーということはなさそうです。

シューベルトの歌曲において、「死」というものは基本的に肯定的な意味合いと表現、例えば明るい調整、いわゆる長調で歌われれることが殆どです。彼の有名な曲である「魔王」なんかもそうですね。

え?この曲には死とか出て来ないのでは…?と思う方もいると思いますが、それについてはシューベルト研究の第一人者である三宅幸夫氏の著書『菩提樹はさざめく』から見ていきましょう。三宅氏によると、この曲における「菩提樹のさざめき(Rauschen)」について以下のように述べています。

菩提樹のさざめきがいざなう先は、永遠の安息であり、より即物的に言えば首吊り自殺なのである。

菩提樹はさざめく』p.58より

この本によると、「さざめき」を意味する動詞「rauschen」は小枝のさざめきの他に、小川のさざめきにも使われています。それは同じくシューベルトが冬の旅の前に作曲した連作歌曲集『美しき水車小屋の娘』にもたびたび出て来る表現なのです。しかし、『冬の旅』において小川は凍り付いており、全くもってさざめいてくれません。水車小屋の娘では、小川のさざめきは「永遠の愛」だったわけですが、冬の旅では「永遠の憩い」の象徴になっています。こういったことを考えていくととても面白いですね。

もう少し本に従って解説を進めると、この菩提樹のざわめきの中に出て来る言葉で「憩い」というのは、「=死の憩い」のことであり、簡単に述べると死の魔力・誘惑のことを指しています。人生がつらい人にとって「死」はとても甘美なものに思えるのですね。

さて、そんなことで少し詩を読み取っていけば、一番最後の段落で私はあの場所からずいぶん離れたところにいる⇒しかし、あのときのざわめきがいつも聴こえるとなっています。これはつまり、あのときからそれだけ時間がたったにも関わらず、今も「死」という誘惑に捉えられている、自殺を考えてしまっている自分がいるということを意味していると考えられるでしょう。

ちなみに曲のタイトルである「Der Lindenbaum(菩提樹)」ですが、この木はドイツでは古くから愛の象徴として使われています。シューベルト以降でも、ブラームスやマーラーといったドイツの作曲家が、こぞって愛を回想するときに使っていますね。ちなみにアジア圏での菩提樹は、仏教の教祖であるお釈迦様がこの木の下で悟りを開いたといわれている木なので、とにかく古くから人間と関わりのあった木であることは間違いなさそうです。

まとめ

ということで、今日はシューベルトが作曲した連作歌曲集『冬の旅』から第五曲「菩提樹(Der Lindenbaum)」の歌詞対訳と解説でした。もしこの菩提樹や冬の旅についてもっと深く知りたい方は、先ほどもご紹介した「菩提樹はさざめく」を読んでみることをおすすめします。特に全曲やるという方はには必須の一冊であろうと思います。きっと新しい世界を知ることができると思います!

ちなみにこちらのサイトではシューベルトの作曲した歌曲について他にも紹介しているので気になる曲が合った方は是非そちらもごらんください!

それではまた違う記事でお会いしましょう!最後まで読んでくださってありがとうございました!

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