「鱒(ます)/シューベルト」の歌詞対訳と解説【Die Forelle/F.Schubert】(ドイツ語/日本語)
どうも、こんにちは!声楽家&ブロガー&ボイストレーナーのとらよし(@moritora810)です。私は普段、演奏活動をしたりしています。特にドイツ歌曲は主なレパートリーです。そこで今回はフランツ・シューベルトが作曲した「鱒(ます)」の歌詞対訳と解説についてお届けしたいと思います。
まず最初に少しだけ「鱒(ます)」についてです。鱒は一言で言うとサーモン、鮭のことです。ニジマスが代表的ですが、鱒はサケ目サケ科の総称ということだそうです。富山県の名物で「鱒の寿司」というのがありますね。日本では一般的に、海にいるのが鮭、川に上って来たものを鱒という風に呼ぶと言うこともあるそうです。どちらにしても鮭ですね!
さて、次に作曲家のシューベルトについてですが、彼は歌曲王と呼ばれているだけあって、他にも有名な曲を数多く作曲しています。他の曲の歌詞対訳と解説も以下に載せているので、興味のある方は是非ご覧ください!それではシューベルト作曲の鱒(ます)についてみていきましょう!対訳は直訳的です!
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「鱒(ます)/シューベルト」の歌詞対訳①
In einem Bächlein helle/明るく澄んだ小川で、
Da schoß in froher Eil/元気よく喜びながら、
Die launische Forelle/気まぐれな鱒が、
Vorüber wie ein Pfeil./矢のように泳いでいた。
「鱒(ます)/シューベルト」の歌詞対訳②
Ich stand an dem Gestade/私は岸辺に立って、
Und sah in süßer Ruh/そして心地よく見ていた、
Des muntern Fischleins Bade/鱒たちが元気に水浴びしているのを
Im klaren Bächlein zu./澄み切った小川の中で。
「鱒(ます)/シューベルト」の歌詞対訳③
Ein Fischer mit der Rute/釣竿を手にした一人の釣り人が、
Wohl an dem Ufer stand,/岸辺に立ち、
Und sah's mit kaltem Blute,/そして冷たい目で見ていた、
Wie sich das Fischlein wand./魚が動き回るのを。
「鱒(ます)/シューベルト」の歌詞対訳④
So lang dem Wasser Helle,/川の水が澄み切っている間は、
So dacht ich, nicht gebricht,/私は思った、無理だろうと。、
So fängt er die Forelle/彼が鱒を捕まえる、
Mit seiner Angel nicht./釣り糸にかからないと。
「鱒(ます)/シューベルト」の歌詞対訳⑤
Doch endlich ward dem Diebe/しかし、ついにその釣り人は
Die Zeit zu lang. Er macht/しびれを切らした。彼は
Das Bächlein tückisch trübe,/狡猾にも川をかきまわして濁らせた。
Und eh ich es gedacht,/私が考える暇もなく、
「鱒(ます)/シューベルト」の歌詞対訳⑥
So zuckte seine Rute,/彼の竿が引き込まれ
Das Fischlein zappelt dran,/その先には鱒が暴れていた。
Und ich mit regem Blute/そして私は沸き立つ血を感じながら、
Sah die Betrog'ne an./罠に落ちた鱒を見つめていた。
「鱒(ます)/シューベルト」の解説①
シューベルト作曲の鱒(ます)ですが、この詩はドイツの詩人・シューバルト(Christian Schubart/1739-1791)によって書かれたものです。彼はシューベルトと同じ時代に生きた人で、彼の友人でした。名前がシューベルトと一字違いなので、印象に残りやすい詩人ですね。シューベルト作曲『ピアノ五重奏曲「ます」(D.667)』は同じ鱒の題名が付けられていますが、それもそのはずで、この楽曲の第4楽章は、歌曲の方の「鱒(ます)」の変奏曲として知られています。
まずこの詩の特徴としては、シューベルトはシューバルトの書いた詩の最後の部分を省略しています。そこで、最終部分の詩を少しみてみましょう。
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この訳を先ほどの対訳の続きと一緒に見て見ると、この曲が若い娘に対する注意や啓発を意味していることが分かります。鱒という若くて元気な女性が、釣り人(悪い男)につかまって吊り上げられてしまうというストーリーのようです。確かに現代でも社会にはそういったことがあるので、これは意義のある注意のように思えます。
「鱒(ます)/シューベルト」の解説②
ただ、実際にこの曲ではこの部分が省略されているので、シューベルトの「鱒(ます)」にどこまでの意味があるかは分かりません。しかし、クラシックの歌手であればこの部分があることは押さえておきたいポイントになるでしょう。
次に、楽曲の方ですが、この曲はA-A-B-A形式で書かれていると言えます。特に重要なのはBの音楽が揺れ動く部分です。詩の中で「水が濁る」という表現のときに、ピアノの和音もそれに相応しい音で追従しています。曲全体を支配している連符は、鱒の元気で軽快な動きを表現していると考えるのが自然でしょう。
非常に有名な1曲ですので、是非こういったところに注目しながら聴いて見るとまた違った風景が見えるかもしれません!それではまた!
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