【腹式呼吸とは?腹式と胸式呼吸のやり方】ボイトレ,発声

2019年5月17日

ボイトレ【腹式呼吸とは?腹式と胸式呼吸のやり方】〈レッスン2〉

Herzlichen Willkommen!! ようこそ!Torayoshi(@moritora810)こと、声楽家・ボイストレーナーの森善虎です。今日は腹式呼吸と胸式呼吸についてお話をしたいと思います!なぜ呼吸について勉強しなければいけないのかは前回の記事をご覧ください!【関連記事:歌(声楽)ってなにを勉強するの?




腹式呼吸と胸式呼吸について

初めて歌を学ぶ半数以上の方は、おそらくはじめに腹式呼吸胸式呼吸について習うのではないかと思います。ここからは、ミリッサ・マルデ/メリージーン・アレン/クルト=アレクサンダー・ツェラー共著《歌手ならだれでも知っておきたい「からだ」のこと》と、バーバラ・コナブル著《音楽家ならだれでも知っておきたい「呼吸」のこと―豊かに響き合う歌声のために》という2冊の本を軸にしながら、私がこれまで学んできた知識や経験をもとに解説していきます。もし深く内容を理解したいのであれば本を読んでみることをお勧めします。意外と図書館にも置いてあることがあるので、是非探してみてください。今回は重要なポイントを抜き出しながら解説していきます。

呼吸

はじめに呼吸そのものについて考えてみましょう。世界にはヨーガ、気功、その他数千年来多くの呼吸法があります。他にも、精神面や心理面を重視した東洋的な座禅・瞑想なども数多く存在します。それらにはかなり共通した部分もあれば、全く異なった部分、あるいは各々に長所と短所があるのが実情です。そこで今回の呼吸については、歌唱と結びつく部分にポイントを絞って考えていきます。

まず、呼吸というものは大別して、「無意識的呼吸(安静時呼吸)」と、「意識的呼吸(随時呼吸)」の2つに分類されます。無意識的呼吸というのは生命維持の為に行われる呼吸のことです。私たちは、「よし、1分間に16~18回ぐらい息を吸おう!」と思って息を吸っているわけではありません。呼吸は誰しもが無意識に、自然に行っています。次に意識的呼吸ですが、これはつまり、「よし、息を目いっぱい吸おう!」とか「腹式呼吸で吸うぞ~!」とかいうのはこの呼吸のことです。ボイストレーニングで私たちが取り扱うのはこの意識的呼吸の部分になります。

ただし、この項目で歌唱との関連で大切な感覚は、「無意識で行われる呼吸と意識的な呼吸をうまくつなげる」というところです。例えば、最後まで息を吐き切れば、肺は意図せずとも勝手に膨らもうとします。この勝手に膨らもうとする身体機能的な動きはほとんど無意識的な動きです。つまり、先行して意識的に肺の空気を吐き切ることで、その次の呼吸(無意識的で本能的な身体の動き)をある意味で意志的に、そして自分の歌唱の味方につけることができます。このとき肺は、最も効率よく多量の空気を肺に入れることが出来ます。

更に、無意識と意識的な呼吸を繋げるというところで述べると、例えば私たち歌手が行う腹式呼吸のトレーニングは、「息を吸ったとき(歌う時)に無意識的に腹式呼吸ができるようになる」ことを目標としています。もちろん、誰しもトレーニングをはじめたばかりの頃は意識的に腹式呼吸をしなければならないのですが、トレーニングを重ねることで、最終的にはそれが自然とできるようになっていきます。そうなってくれば、呼吸に意識をもっていかなくても、他のこと、例えば音程や音色、声のポジションや表現といったことに集中できるようになります。このように、意志的に行っているものを無意識で出来るようになるのが訓練であり、ボイストレーニングそのものであると言えるでしょう。呼吸についての生物の進化の歴史や呼吸全般について更に深く学びたい場合は、米山文明著《声の呼吸法-美しい響きをつくる ー》がお勧めです。


呼吸の基本原理

ここで呼吸の基本原理について押さえておきましょう。

  • 筋肉は動くときに収縮します。すなわち、繊維が短くなります。
  • 収縮した筋肉は、作業が終わると自然に開放されて休んだ状態に戻ります。(緊張と緩和)
  • 解放された筋肉には伸縮性があります。これはゴムバンドが伸ばされたあとに元の状態に戻るのとよく似ています。(この性質を「弾性反張(だんせいはんちょう)」と呼びます。)
  • 多くの筋肉は、他の筋肉と反対に動きます。いわゆる「拮抗筋」と呼ばれる対になった筋肉では、一方の筋肉を収縮するために、もう一方の筋肉を開放しなければなりません。

この呼吸の原理で大切なことは、呼吸は筋肉であるということです。ですので、ここでは筋肉について理解することが大事になってきます。筋トレをしたことのある方はこの文章を読んだだけで具体的なイメージがつかめると思いますが、筋肉は使っているときに収縮します。そしてそれが終わると開放されます。

呼吸に使わる筋肉ももちろん同様で、息を吸うとき(吸った状態)に収縮が起きており、そこから息を吐くときに緩和と開放が起こります。多くの歌手で起こる障害は、この緩和の時に「必要以上に支えすぎてしまう」ことだろうと思います。必要以上に息を支えることは自然な息の流れを妨げてしまい、自然な響きを損なってしまいかねません。この筋肉の収縮についてはまた横隔膜との関連で触れていきます。

胸式呼吸

ここから胸式呼吸と腹式呼吸、その二つの違いについて学んでいきます。まずはじめに理解するべきポイントは、「胸式呼吸と腹式呼吸は常にどちらかが優位か劣勢かというだけで、どちらかをすればどちらかが消えるわけではない」ということです。つまり、「胸式呼吸100:腹式呼吸0」とか、「胸式呼吸0:腹式呼吸100」とか、そういうことではないということです。実際にこれは数値で表すことは不可能で、腹式呼吸を優位にするとか、胸式呼吸を少なめにするとかそういう風に捉えてください。例えば、仰向けのときの呼吸は横隔膜による腹式呼吸がかなり優位になりますし、立っているときでは胸式の方が優位になります。さて本題の胸式呼吸について説明すると、胸式呼吸とは胸郭を操作する呼吸法です。そして理解すべきポイントとしての特徴は横隔膜との連動がないことです。胸式呼吸は、他にも、「全速力で走った後の呼吸」であったり、「肩が上がる呼吸」であったり、「浅い呼吸」といった風にも説明されたりしますが、どちらにしても歌唱との兼ね合いで考えるのであれば、「横隔膜との連動がない」ということが最大の特徴だろうと思います。それでは何故それが歌に適さないのか、あるいはどうして胸式呼吸よりも腹式呼吸の方が歌唱において優位性があるのかについては次の項目で触れたいと思います。

腹式呼吸

胸式呼吸が「むねしき」であるのに対して、腹式呼吸は「おなかしき」の呼吸です。ここで言語的によく起こる勘違いが、お腹を動かすのが腹式呼吸で、そうではないのが胸式呼吸であるという認識です。あながち間違いとも言い難いのですが、少し誤解を生むかもしれません。《歌手ならだれでも知っておきたい「からだ」のこと》で述べられているボディ・マップ(身体のパーツの大きさや機能や場所を正確に認識すること)では、肺の位置は、いわゆるお腹(おへそあたり)ではなくて鋤骨の後ろ、むしろ胸のあたりに存在します。(図参照)

ですので、おへそのあたりで息を吸うとどれだけ言ったとしても、そこにあるのは腸とかそういうものですので、どう頑張ってもそこに息は入りません。しかし呼吸と同時にそのあたりが動くことがあります。それはその部位に横隔膜との連動が存在するからです。横隔膜との連動については具体的に次の項目で触れます。次に、どうして腹式呼吸が歌に使われるのかについて説明したいと思います。腹式呼吸が歌唱に適している理由は大きく2つあります。

それは、腹式呼吸は胸式呼吸と比べて、①「息の吸う量(肺活量)を多くすることができます。」そして、腹式呼吸にすることで、②「呼吸と横隔膜との連動で歌う時に声を(息を)支えることができます。」



①から説明すると、歌に関して言えば息を沢山使えれば使えるほど有利です。これは声というものが息で作られているので当たり前のことではありますが、息が多ければ長いフレーズを歌うことが出来ますし、もちろん声量も調整したりダイナミクスを作ることができます。ですので、空気の量は結果としてより豊かな表現に繋がります。

次に②ですが、腹式呼吸によって横隔膜と連動した空気は声の支えとして使うことができます。《歌手ならだれでも知っておきたい「からだ」のこと》で述べられている二つの支え、身体構造的な支えと、呼吸の支えでは、次のように述べられています。

「支え」は、2つに分類でききます。構造の支えと呼吸の支えです。~中略~「呼吸の支え」とは呼吸の動きがどのように音をだしやすくするかということです。息を吸うときに、腹筋と骨盤底の筋肉が開放されゆるむままにさせれば、この2つの筋肉の弾性反跳が、次に息を吐くときの流れの助けになるーつまり「支え」てくれます。~中略~つまり、上手に息を吸えば、腹筋、骨盤底、助軟骨から、絶えず支えを受けられるのです。~中略~このためには、助間筋と横隔膜を徐々に開放しながら、助骨の下がりぐあいを調整します。

出典:《歌手ならだれでも知っておきたい「からだ」のこと 74ページ》

この中で重要な考え方は、先ほども呼吸の基本原理で触れた弾性反張です。これは簡単に言うと、「筋肉は伸びると縮もうとする」「縮むと伸びようとする」というような、自然な筋肉の反発(バネ)のことです。息を吸い、肺が高気圧になって周りの筋肉が緊張した状態から、息を吐くときに自然に起こる筋肉の緩和と開放に身をゆだねる感覚が大切だと述べられています。

また、この項目では、「もっとしっかりした支え」が必要かどうかを問題にする前に、もっと「空気の流れ」が必要かどうか、あるいは、「もっと流れを抑えること」が必要かどうかを問いかける必要があると述べられています。声の支えは大切な要素のひとつではありますが、それによって身体がガチガチになってしまい、持っている呼吸さえ使えなくなってしまうのでは本末転倒です。

こういった理由から腹式呼吸は歌においてとても大切なテクニックとして認識されています。では実際にどうやって腹式呼吸を行うのかについて述べていきましょう。まず腹式呼吸は寝ているときの方が優位になります。ですので、もし自宅でこの記事を読んでいる方は是非寝ながら読んでください。そして自分の手で肺の位置や横隔膜の位置を確認してください。

自分の身体を触りながら実際に呼吸する場所やその具合を確認する作業はボディ・マップの観念から非常に大切なことです。私自身もこのやり方を取り入れてからパフォーマンスが確実に向上しています。また、肺は背中の方に多くの容量を抱えています。もし息を最大限、上手に吸えているのであれば背中の方が膨らむ感覚になると思います。下の図は肺を上の方から見た断面図です。手前が背骨や背面です。そちら側により沢山の容量があることを確認してください。この図と自分の身体の感覚をマッチさせるように呼吸を試みてください。

横隔膜との連動

以上のように、胸式呼吸が胸郭の筋肉を使って吸う呼吸であるのにたいして、腹式呼吸では横隔膜と連動して呼吸を行います。これは先ほどの本の中で「横隔膜の往復運動」と呼ばれています。横隔膜の筋肉は、この往復運動によって、高いドーム状(息を吸う前)からよりなだらかなドーム状(息を吸ったとき)へと変化していきます。具体的には、息を吸ったとき横隔膜は下に下がり(収縮して)、息を吐くときには横隔膜が自然と上がってきます(緩和され広がる)。歌うための呼吸を鍛えるには、肋骨が下へ・うちへと最大限の往復運動をしなければならないのと同様に、横隔膜もドームが最大限高くなるように往復運動をしなければなりません。下の図はそれを分かりやすく示しており、息を吸ったときには黒矢印のように横隔膜が下に、肺が横に広がるように動き、息を吐く時には白矢印のように筋肉が開放される様子を表しています。ボイストレーニングでは、この肺と横隔膜の往復運動をスムーズに行えるように訓練する必要があります。




腹式呼吸と胸式呼吸のまとめ

胸式呼吸

  • 運動をした後に肩が上がるような呼吸
  • 浅い呼吸
  • 胸郭を使った呼吸

腹式呼吸

  • 深い呼吸
  • 肩が上がらない呼吸
  • 横隔膜を使った呼吸

他の記事にもまとめますが、この呼吸機能を活発にさせるだけでダイエット効果、更には頭が良くなるかもしれません!その詳しい内容についてYoutubeでお話しているので、是非確認してみてください!

それではまた次回!