『アイーダ』の「凱旋行進曲」解説【歌詞の意味とオペラの場面】
オペラ『アイーダ』の劇中に登場する名曲、「凱旋(がいせん)行進曲」を知っていますか?
アイーダを鑑賞した経験がある方はもちろんご存知だと思います。しかし、曲名を聞いてぴんと来なかった方の身近にも凱旋行進曲は流れていますよ。
実はサッカーの応援歌として、よく歌われているのです!
凱旋行進曲?アイーダって?と思われた方も、きっと聞き覚えがあることでしょう。
今回はG.ヴェルディが生み出した名曲、凱旋行進曲の歌詞を解説します。
一緒にアイーダの世界を覗いてみましょう。
歌詞の意味などを知ると、この曲に対する見方や感じ方が変わるかもしれません。
凱旋行進曲が登場する場面
アイーダについて全く知らないという方は、是非あらすじも合わせてご覧下さい。(関連URL→ オペラ『アイーダ』の簡単あらすじ解説!(G.ヴェルディ作曲))
凱旋行進曲は、第2幕 第2場で登場します。
アイーダの作中でも、とても有名な場面の一つです。この作品を象徴していると言っても過言ではありません。
登場する演者の数も多く、それぞれの劇団や演出家によって異なりますが非常に豪華な場面に仕上げます。
「凱旋行進曲」 どんなシーン?
エジプトの将軍ラダメスが戦争に勝利して、文字通り凱旋するシーンです。
『凱旋』という言葉ですが、日常生活ではあまり使いません。読み方も分かりにくいかもしれません。こちらについても解説しましょう。
『がいせん』と読み、戦争などの戦いに勝って帰還することを指します。帰還した暁には、戦士を英雄として崇め、みんなで勝利を祝い喜びを分かち合います。
作中では敵国であるエチオピア軍を撃退した英雄ラダメスの帰還を国を挙げて祝い、歓喜や熱狂に満ちています。
アイーダトランペットと圧倒的な合唱
ここでの見所はアイーダトランペットの演奏と合唱の素晴らしさではないでしょうか。
アイーダトランペットはオペラアイーダの演奏の為に使用されたことから、この呼び名が付けられました。オペラでは今作品にしか使用されません。
ファンファーレ・トランペットとも呼ばれていて、オペラアイーダ以外ではイベントのファンファーレで演奏されることもあります。
合唱の非常に迫力があります。冒頭でお話したサッカーの応援歌として、このシーンの合唱が使われています。
凱旋行進曲 登場人物の想い
歌詞の和訳などを見ていく前に、この場面についてもっと詳しく解説しましょう。
エジプト軍を撃退した勇者ラダメスの帰還をお祝いする場面であることは先述しました。
オペラ『アイーダ』は将軍ラダメス、エジプトの奴隷アイーダ、エジプトの姫アムネリスの愛を描いた作品です。
※アイーダはエジプトに囚われていますが、身分を隠していて、実はエチオピアの王女です。
3人の恋愛模様の背景には、作中で繰り広げられるエジプトとエチオピアの戦争があります。
エチオピア軍と戦うラムセス
物語が始まるとすぐ、エジプト側に「エチオピアが侵攻してきている」との知らせが入ります。
このとき、神託でエジプト軍の司令官に選ばれたのがラダメスです。
ラダメスは火の神の神殿にて、巫女や神官が祈りを捧げる中、聖剣を受け取り戦争へと向かいました。
つまりラダメスは、エジプトの王ファラオや、民たち、そして神官の期待を一心に背負って戦場に赴いた存在なのです。
神に選ばれ、聖剣を受け取った戦士なのですから。
アイーダ簡単あらすじの方で紹介しているのですが、凱旋式の前にアムネリスが式に出る支度をしている場面があります。
もちろんその時点でエジプトの勝利はみんなに広まっているわけですから、この場面からも勝利への歓喜が伝わってきます。
時代背景から考えるエジプトの民の願い
みんなの願いや期待を背負ったラダメスがエチオピアに勝ったとの知らせを聞いた時、エジプトの民たちはどれだけ嬉しかったでしょうか。
現代のように多くの物や食べ物に恵まれているわけでも、多くの人が豊かに過ごせるわけでもない時代背景を考えてみて下さい。
この時代の人たちにとって、自分たちの領地に侵攻しようとしたエチオピア軍を撃退したラダメスはまさに豊かさや勝利をもたらした英雄です。
そして非力な民たちにとって、エチオピア軍から命を守ってくれた恩人でもあるでしょう。
長く語ってしまいましたが、古代エジプトの時代背景を考えてみるだけで、ラダメスの勝利がどれほど嬉しかった出来事なのか見えてきたのではないでしょうか?
ぜひ、以上を踏まえて凱旋行進曲の場面をご覧下さい。
エジプトの民や神官たち、そしてアムネリスに思いを馳せながら、続く歌詞の和訳や意味を読んでいただけると嬉しいです。
歌詞の和訳と意味
ラダメスとエジプトの勝利を祝う凱旋行進曲ですが、続けて歌詞の意味を解説しましょう。
和訳 エジプトの民
まず、エジプトの民たちが登場して、歌で勝利の喜びを表現します。
「私たちはデルタを治める王とエジプト、そしてイシスの神に祝いの歌を捧げます。
ファラオに栄光あれ!ファラオに栄光あれ!
この祝いの歌を捧げます」
この歌詞からは、民たちが熱狂し、これからのエジプトの発展を願っている様子がよく伝わってくると思います。
ファラオは皆さんご存知でしょうか?アイーダの作中でもエジプトの王様として登場して、民から崇められています。
イシスの神は古代エジプトにおいて信仰されていた豊穣の女神のことです。アイーダでも何度も「イシスの神」という言葉が出てくるので、是非覚えておいて下さいね。
和訳 エジプトの娘たち
次にエジプトの娘たちが登場します。
民たちの合唱部分はとても力強く熱気に満ちていましたが、一転柔らかく滑らかで美しい旋律が流れます。
月桂樹で作られた月桂冠を、凱旋する勝利の戦士の頭の上に飾りましょう。
たくさんの美しい花々を飾って、儚げな花びらで戦いに使われた武器に純白のヴェールを被せましょう。
エジプトの娘たちよ、踊って。神秘的な輪舞を見せよう。
輝く星たちが太陽の周りを踊っているのと同じように踊れ。
ここではエジプトの娘たちが勝利を祝い、重要な登場人物である「アムネリス」が現れます。
アムネリスはファラオ王の娘で、エジプトの姫。
この合唱をバックにドレスアップをして登場するアムネリスはとても美しく、観客の目を奪います。
和訳 神に感謝を捧げる神官
アムネリスが民衆の前に立つと、次はエジプトの神官が登場します。
戦争を勝ち抜いた英雄を崇めると同時に、神への感謝の気持ちを歌います。
我らに勝利を与えて下さった神々よ、どうか私たちに目を向けて下さい。
私たちはこの勝利の日に、あなたに感謝を捧げます。
どうか我らの感謝を受け取って下さい。
和訳 ラダメスを心待ちにする民
もう一度、民たちが歌います。もうすぐ戦士たちを率いた将軍ラダメスがやってきます。
歌詞からも、「英雄たちの姿を一目見たい!」という民衆の熱い気持ちが伝わってきます。
こちらへ来るのだ、勝利をもたらして凱旋する将軍よ。
我らと共に、この勝利の喜びを分かち合おう!
さぁ、英雄たちがここを通るぞ。
その歩みの上に、花びらの舞を降らせよう。
もう一度、司祭が感謝の歌を捧げます。歌詞こそ同じですが、このシーンのクライマックスに向けて更に迫力が増していきます。
観客たちを勝利の喜びに満ちたエジプトの世界へと誘うのです。
我らに勝利を与えて下さった神々よ、どうか私たちに目を向けて下さい。
私たちはこの勝利の日に、あなたに感謝を捧げます。
どうか我らの感謝を受け取って下さい。
そして遂に英雄ラダメスが登場します。
凱旋行進曲はクライマックスを迎え、民たちが「エジプトに栄光あれ!」という歌詞を繰り返して、曲は熱狂のうちに終わりを告げます。観るものに大きな余韻を残すでしょう。
さいごに
いかがでしたか?
『アイーダ』といえば、ラダメスとの悲恋や、アムネリスとの恋の三角関係が観客に大きな感動を与えます。
もちろん、そうした愛の物語であることは大前提として、今回は勝利の喜びを分かち合う「凱旋行進曲」にスポットを当ててみました。
エジプトに勝利をもたらしたラダメスを祝う凱旋行進曲ですから、サッカーの応援歌としてもピッタリでしょう。
なぜサッカーの応援歌で歌うのか?
ちなみに「何故オペラアイーダの曲なのにサッカーの応援歌になったのか?」という疑問を持たれるかもしれません。
この疑問に対する説はいくつかあるのですが、有力視されているのが以下のような話です。
オペラ『アイーダ』の作曲をしたG.ヴェルディ。彼はイタリアの都市パルマの出身でした。
パルマでは、この名曲「凱旋行進曲」が応援歌として歌われていたようです。
サッカー選手の中田英寿さんがパルマに行った際、凱旋行進曲をとても気に入ったそうです。そして日本に帰国後、応援歌として歌い始めたことが始まりとなっているそうです。
もちろん諸説あります。しかし経緯はどうあれ、サッカー界でもオペラの名曲が歌われていることがとても嬉しいです。
これからもこの名曲「凱旋行進曲」が長く歌われることを願い、今回の記事を締めたいと思います。
歌詞の意味や、場面についての解説、登場人物の想いが皆様に伝われば幸いです。
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