オペラ『アイーダ』の簡単あらすじ解説!(G.ヴェルディ作曲)
オペラ作品の中で悲恋といえば、何を思い浮かべますか?
かの有名なロメオとジュリエットでしょうか?それとも椿姫を思い浮かべた方もいらっしゃるかもしれませんね。
今回解説するオペラは、G.ヴェルディ作曲のアイーダです。
アイーダはとても有名なオペラ作品で、1871年に初演が行われました。
物語としてはとても悲劇的な結末を迎えます。
ですが、それぞれの登場人物が命を懸けて誰かを愛する姿。この真っ直ぐな姿が、時を超えて現代に生きる私たちの心をも捉えて離さないのです。
また作中にはサッカーなどで有名な凱旋行進曲も使用されています。G.ヴェルディの音楽的才能を堪能できるのも、この作品の見どころの一つです。
今日はその名作アイーダの魅力をお伝えするために、簡単なあらすじを書きました。解説しながら物語を紐解いていきましょう。
オペラ『アイーダ』物語の舞台
あらすじ解説の前に、物語の舞台を簡潔にご紹介しましょう。
舞台は古代エジプト。
作中では、エジプトとエチオピアの争いが繰り広げられます。この争いが悲恋へと繋がりますので、ぜひ覚えておいて下さいね。
オペラ『アイーダ』に登場する3人の重要人物
・アイーダ
この物語のヒロインです。
エジプトに囚われた者として登場しますが、実はエチオピアの王女です。身分を隠して、エジプト王女アムネリス(後述)の奴隷として従えています。
アイーダと悲劇の恋に落ちる男性が、エジプトの将軍ラダメスです。
・ラダメス
アイーダとは秘密の関係ながらも、とても真っ直ぐに彼女を想っています。
エジプトの将軍という役柄なので、男性的で逞しいオペラ歌手が演じていることが多いです。
・アムネリス
彼女も主人公のうちの1人と言えるでしょう。
エジプトの王女で、ラダメスに想いを寄せています。
ですが、彼が想う相手はアイーダだけ。物語の途中でそのことに気付きますが、決して諦めようとしません。
最後の最後までラダメスを自分のものにしようと、色々な手段を講じます。
彼女が動くことにより、物語も大きく進展を迎えます。
オペラ『アイーダ』の簡単なあらすじ
「第1幕 第1場」あらすじ
物語はエジプトの都市メンフィスにある宮殿の広間から始まります。
登場するのは祭司長ランフィスとラダメス。
祭司長がエチオピアの軍勢がエジプト領地に迫りつつあることを告げます。この危機に対して、近いうちに神託があり、エジプト軍の司令官が選ばれることも。
ラダメスは自分が選ばれたならどんなに良いだろうかと、希望で胸をいっぱいにします。
ラダメスが司令官に選ばれたい理由とは何か?
それは秘密の恋という関係にある、愛するアイーダの為だったのです。
彼女はエチオピアから来た奴隷でした(登場人物紹介で述べた通り、身分を隠しているだけでエチオピアの王女ですが)
ラダメスは自分が戦争に勝利したなら、奴隷たちを解放したいと考えていたのです。それが叶えばアイーダも晴れて自由の身になれると。
ラダメスが戦いたい理由は、恋人のアイーダだったのですね。
曲:清きアイーダ
次にエジプトの姫、アムネリスが登場します。
いつもラダメスを見つめている彼女は、彼の視線が自分以外の何かに向いていることに気付きました。
その時のラダメスの顔がとても輝いているように見えたのです。
何を考えているの…?
誰か特別な人がいて、あなたをこんなに幸せそうな顔にさせるの?
…と、鎌をかけます。
「エジプト軍の司令官に選ばれる名誉が欲しい」と答えるラダメスですが、アムネリスの目は誤魔化せません。
そんなことよりももっと甘い夢はないのですかと追及するアムネリス。
ラダメスは「アイーダへの想いが悟られてしまったのではないか」と焦る気持ちが隠せません。
そこへアイーダがやってきます。
彼女は涙を流していました。エチオピアの王女である彼女は、戦争が始まると聞いて祖国は大丈夫なのかと不安になっているのです。
しかし涙の理由はそれだけではありません。ラダメスを想う恋の涙でもありました。
泣いているアイーダを見たラダメスは動揺していました。
このことからアムネリスは、ラダメスが愛する女性はアイーダなのではないかと疑いを持ってしまうのです。
そしてアイーダの涙の理由についても、アムネリスには察しがついてしまいました。アイーダに激しく嫉妬し、心の中で彼女を「性悪だ」と罵ります。
この後すぐに事態は急展開を迎えます。
エジプト国王が登場して、民に語りかけます。
なんとアモナズロ率いるエチオピア軍がエジプトを侵略し始めているとのこと。
アモナズロはエチオピアの王様で、アイーダの父親です。
戦いが始まる予感に熱血する民たち。
ここでエジプト国王から、神託があったことが告げられる。
イシスの神は司令官にラダメスを選んだと。
この神託にラダメスは歓喜します。広場の者も皆、勝利の予感に湧き上がりました。
ただ一人、アイーダを除いて。
アイーダとしては、愛する恋人と父(ラダメスとアモナズロ)が戦うことになるのです。
心境はとても複雑で切なく、愛する恋人は敵国側の人間なのだと思い知らされます。
曲:勝ちて帰れ
「第1幕 第2場」あらすじ
場面は火の神の神殿に移ります。
祭司長のランフィス、そして大勢の巫女が登場。勝利のための祈りを捧げます。
司祭長に見守られる中、ラダメスは聖剣を受け取りました。
曲:全能なる神よ
「第2幕 第1場」あらすじ
第2幕はアムネリスの部屋から始まります。
戦いに勝ったのはエジプト軍でした。
その知らせはすぐに皆に広がり、アムネリスも凱旋式に出席するために着飾っています。
アイーダを見つけたアムネリス。ラダメスへの気持ちを試すために、このようなことを言います。
「エジプト軍は勝ったけれど、ラダメスは死んでしまった」と。
その知らせを聞いて、アイーダは悲しみに打ちひしがれます。
酷く悲しむ彼女の姿を見たアムネリスは、ますます疑惑を深めてしまいました。あんなに悲しむなんて、やっぱり愛しているのではないかと。
「次に私がかけた言葉で、真偽ははっきりするわ」
そう思い、次に「私は嘘を言ったのよ。ラダメスは生きている」とアイーダに言いました。
するとアイーダの顔に溢れんばかりの光が差し込みます。両手を大きく広げて歓喜するアイーダでしたが、喜ぶ姿を見たアムネリスは確信してしまいました。ラダメスとアイーダの関係を。
アムネリスは嫉妬に駆られ、アイーダを責め立てます。
「身分違いの恋だ!」「私の恋敵、私を裏切ったらどうなるか分かっているの」と。
アイーダはエジプトの姫であるアムネリスの怒りを買ったことに気付き、怯えて慈悲を乞うるのでした。
「第2幕 第2場」あらすじ
とても華々しい凱旋式が行われます。
ドレスアップしたアムネリスが現れ、ラダメスが凱旋します。
曲:凱旋行進曲
エジプトに勝利をもたらしたラダメスは英雄として崇められました。
エジプト王も「褒美としてどのような願いも聞き入れる」と約束しました。
そこでラダメスはエジプトに囚われている奴隷たちの解放を懇願します。
そこにエジプトの捕虜たちが連れて来られて、その中にはアモナズロの姿もありました。
アイーダはすぐに父に駆け寄りました。二人は固く抱き合い、再会を果たします。
しかしアモナズロも身分を隠します。奴隷であるアイーダの父、そして一人の兵士として振る舞いました。
「エチオピアの国王は死んだ、私たちに慈悲を」とエジプト国王に懇願します。
ラダメスも改めて、奴隷たちの解放を訴えました。
しかしこれに反対するのがエジプトの司祭長。奴隷の解放は危険だとして同意しません。
結果、アイーダの父であるアモナズロだけを人質として捕らえ、他の奴隷たちは解放されることが決まりました。
そして、凱旋式の最後に衝撃の結末が待っているのです。
エジプト国王が、ラダメスにアムネリスとの結婚を命じるのです。
戦いに勝った褒美として姫をやるということでしたが、アイーダを愛するラダメスの願いには反していました。
好きな人と結婚できると、アムネリスの胸は喜びで溢れます。
一方でラダメスとアイーダは深く絶望するのでした。
「第3幕」あらすじ
ナイル川に浮かぶ船の上には、アムネリスとエジプト司祭長の姿がありました。
婚礼の前夜、イシスの神殿で祈りを捧げるようにとアムネリスに告げる司祭長。
婚礼を控えたアムネリスの胸は喜びでいっぱいだったことでしょう。
しかし同時に、ラダメスの愛が自分に向いていないことは分かっていました。
「ラダメスの心が私に向くようにと祈ります」
という言葉を司祭長に残すのですが、切ないですね。
そしてアイーダもナイル川のほとりにやってきます。
実はこの場所に来るようにと、ラダメスに呼ばれていたのでした。
アイーダの心は不安でいっぱいでした。
姫との婚礼が決まってしまった恋人。自分に別れを告げる為に呼んだのではないかと…。
アイーダは故郷のエチオピアに思いを馳せて歌いますが、そこに父であるアモナズロが現れました。
曲:おお、わが故郷
彼はエジプト軍への復讐心に燃えていました。
「お前次第で、愛する恋人との未来も手に入れることができる。祖国に帰ることもできるのだぞ」とアイーダをそそのかしました。
ラダメスからエジプト軍が進行する予定の道を聞き出してくれ…とアイーダに頼むのです。
そんなことは出来ないと拒否するアイーダでしたが、父親から荒れ果てた祖国の話を聞いて、不本意ながらも了承してしまいました。
そこに約束通りラダメスがやってきます。
アモナズロは物陰に隠れて見ています。
アイーダはラダメスに懇願しました。
ここに居ても私たちに未来はない。一緒に私の祖国へ来て欲しいと。
最初は祖国を捨てることはできないと困惑するラダメス。
しかし「それならここで私を殺して下さい」と言われて、祖国エジプトではなく愛を選ぶ決心をするのです。
一緒に逃げると言ってくれたラダメスに、アイーダは尋ねました。
「私たちが無事にエチオピアへ逃げるために、軍隊に会いたくない。どのルートを行けばいいのか」と。
そしてラダメスは「ナパタの谷をエジプト軍が進行する予定だが、明日までは誰もいない」と軍事機密を話してしまいました…。
それを聞いていたアモナズロ。遂に二人の前に飛び出してきます。
そして実は自分がエチオピア国王であることを打ち明けました。
敵に軍事機密を渡してしまったことに気付き、打ちのめされるラダメス。
そこに数多くの衛兵と司祭長がやってきます。
ラダメスはアイーダとアモナズロを逃がしましたが、代わりに自分が捕まってしまったのです。
「第4幕 第1場」あらすじ
物語はクライマックスを迎えます。
場所は地下牢前。
アムネリスはラダメスが捕まったことを嘆き、打ちひしがれていました。
軍事機密を漏洩させたラダメス。彼には恐ろしい運命が待っていることを、アムネリスは知っていたのです。
でも同時にラダメスがアイーダと逃げようとしたことに、どうしようもない程に悲しみや怒りを感じていました。
葛藤する彼女ですが、自分はラダメスをとても愛していることに気付きます。
この愛を貫きたい!
そう決心したアムネリスは、ラダメスを自分の元に呼び寄せます。
曲:憎い恋敵はいなくなった
ラダメスと会うことができたアムネリス。
ありったけの想いを伝えます。
あなたに死んでほしくない。私が弁護すればきっと助けることができる。助けるから、もうアイーダには会わずに私を見て欲しいと。
しかしアイーダとの別れで生きる気力を失っていたラダメスは、アムネリスのどんな言葉にも応じません。
頑なにアムネリスを拒むラダメス。遂に彼女の怒りを買ってしまいます。
「私の愛は怒りに変わった」と激昂して衛兵を呼び、ラダメスはまた囚われの身になってしまいました。
しかし、アムネリスはすぐに後悔します。
自分が助けなければ、ラダメスは死んでしまう。
どうしてあんなに激しく嫉妬してしまったのだろうと。
裁判の様子がアムネリスにも聞こえてきます。
彼は無実だ!助けて!と叫びますが、最早誰にも届きません。
「ラダメスは死刑」という判決を聞きながら、祭司長たちを無慈悲な裏切り者だと罵り続けます。
「第4幕 第2場」あらすじ
ラダメスが閉じ込められたのは、石の墓でした。
墓の中に生きたまま閉じ込めるというのです。
固い扉が閉められ、死の覚悟を決めます。
アイーダが生きていることを願ったとき…。
なんと、何かが物陰から飛び出してきたではありませんか。
そして飛び出してきたのは、愛するアイーダでした。
彼女はラダメスに刑が下されることを予感していました。先にこの墓の中に入って、彼を待っていたのです。
アイーダは二人で死ぬ覚悟を決めていましたが、彼女が死ぬには若すぎるとラダメスは言います。
アイーダだけでも逃がそうと石の扉を動かそうとしました。でもそれはあまりにも重く、戦いで鍛え抜かれた彼の腕でも動かすことが出来ません。
二人は天国で一緒になれると信じ合いながら、暗い墓の中で息絶えました。
曲:さらばこの世よ、涙の谷よ
そして最後に喪服を着たアムネリスが現れます。ラダメスが安らかに天に召されるようにと、祈りを捧げるのでした。
さいごに
今回はG.ヴェルディ作曲、アイーダのあらすじを簡単に解説しました。
いかがでしたでしょうか?
見どころを簡潔にまとめたものになってしまいましたが、この作品の素晴らしさが伝れば幸いです。
初めてアイーダを観劇した際、あまりにも悲劇的かつ美しい愛の結末を目にして、一瞬にして夢中になってしまいました。
オペラの中でも、アイーダは特にお気に入りの作品です。
DVDなどで何度も鑑賞するうちに詳しくなっていきました。
敵国同士の人間であり、運命の渦にのまれながらも、お互いへの想いを貫くアイーダとラダメス。
二人の愛には何度も感動させられます。
墓に閉じ込められながらも、二人で永遠の愛を信じるのです。そのひたむきな姿がとても美しいと思います。
初演は1871年ですが、21世紀前半を生きる私たちにも感動を与えてくれます。
それはこれからも変わらないでしょう。人が誰かを愛するという本質は普遍的なものだからです。
アムネリスも二人を引き裂くというポジションでありながら、とても一途で憎めないところがあると思います。
彼女が欲しかったものはただ一つ。ラダメスの愛なのです。地位でも名誉でもありませんでした。
姫であるが故なのか、とてもわがままで身勝手さが目立ちます。しかし愛を願う気持ちは、実はラダメスやアイーダと同じではないでしょうか?
恋を巡る三角関係というものは、いつの時代も人気があります。
それはそれぞれの登場人物に共感できるものがあるからではないでしょうか?
アイーダの中で描かれる三角関係も、時代は関係なく多くの人の共感を得ているのだと思います。
ちなみに冒頭でちらと挙げた椿姫もG.ヴェルディ作曲のオペラです。(関連URL:椿姫の乾杯の歌の解説!)
彼はアイーダや椿姫以外にも、多くのオペラを作曲しています。
本記事のあらすじをご覧になった皆さまが、G.ヴェルディにも興味を持って下さったなら幸いです。
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