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『ヘンゼルとグレーテル』のあらすじと解説!E・フンパーディンク作曲

『ヘンゼルとグレーテル』のあらすじと解説!E・フンパーディンク作曲

グリム童話として有名な『ヘンゼルとグレーテル』ですが、オペラにもなっているのをご存じでしょうか。本記事では『ヘンゼルとグレーテル』の音楽の特徴やあらすじなどを解説しています。有名な曲も紹介しているので、ぜひ鑑賞の際の参考にしてみて下さい。

『ヘンゼルとグレーテル』はどんなオペラ?特徴を解説!

『ヘンゼルとグレーテル』は子ども向けのオペラと思われがちですが、音楽は大人でも楽しめるほど充実しています。鑑賞をより楽しむために、『ヘンゼルとグレーテル』の音楽にはどんな特徴があるのか押さえておきましょう。

『ヘンゼルとグレーテル』とは?

『ヘンゼルとグレーテル』は、ドイツの作曲家エンゲルベルト・フンパーディンクのオペラです。グリム童話『ヘンゼルとグレーテル』を元にして作られたオペラで、台本は妹のアーデルハイト・ヴェッテによって書かれました。

『ヘンゼルとグレーテル』は最初からオペラとして書かれたわけではありません。アーデルハイトの依頼で子供たちの劇につけた音楽が好評だったため、フンパーディンクはオペラとして上演することを決めたそうです。

『ヘンゼルとグレーテル』は1893年にワイマールで初演されるとたちまち大人気になります。当時の皇帝・ヴィルヘルム二世も大絶賛するほどの人気ぶりだったそうです。『ヘンゼルとグレーテル』の人気は世界中に広まり、現代でも「メルヘン・オペラ」の代表作として上演され続けています。

メルヘン・オペラとは

「メルヘン・オペラ」とは、「魔法」や「妖精」などのメルヘンな要素がある物語に、道徳的なメッセージを含んだオペラのことです。ドイツではワーグナー登場以降、彼のオペラと差別化できるような作品を書くために、多くの作曲家が苦労を強いられました。

その状況の中、フンパーディンクはこのオペラで「メルヘン・オペラ」という新しいジャンルを作り出します。まさに「脱ワーグナー」に成功したと言ってもよいでしょう。

『ヘンゼルとグレーテル』の特徴

フンパーディンクは『パルジファル』上演時にワーグナーのアシスタントを務めていました。脱ワーグナーに成功したフンパーディンクですが、『ヘンゼルとグレーテル』にはワーグナーの影響を受けたと思われる箇所が多く存在しています。

ライトモティーフ

「ライトモティーフ」とはワーグナーが確立した作曲技法で、メロディーによってある特定の人物・場面・感情などを表現する技法のことです。登場人物に合わせたテーマソングのようなものとも言えるでしょう。

『ヘンゼルとグレーテル』にもこのライトモティーフが数多く登場しています。同じメロディーがリズムや音程を変えながら何度も登場しているので、ライトモティーフを探してみるのも面白いですね。

大編成のオーケストラ

モーツァルトの時代は小編成だったオペラのオーケストラも、時代を経るにつれて徐々に編成が大きくなっていきます。『ヘンゼルとグレーテル』のオーケストラ編成も「3管編成」と呼ばれる大きな編成です。そのため声が育っていない子供や若い歌手がこのオペラを歌うと、声が巨大なオーケストラの音に埋もれてしまいます。ヘンゼルやグレーテルは子供の役ですが、声がしっかりと完成している中年の歌手でないと務まりません。

『ヘンゼルとグレーテル』の登場人物とあらすじを解説!

『ヘンゼルとグレーテル』は有名な童話ですが、ヘンゼルとグレーテルのどちらが兄だったかわからなくなってしまう方も多いのではないでしょうか。あらすじも原作とは異なっている箇所がいくつかあるので、いきなりオペラを見始めると混乱してしまうかもしれません。ここでは『ヘンゼルとグレーテル』の登場人物とあらすじを解説していきます。

『ヘンゼルとグレーテル』の登場人物

  • ヘンゼル(メゾソプラノ)

グレーテルの兄。少年ですが、女性のメゾソプラノ歌手が演じます。魔女が登場して以降、ヘンゼルは魔法で動けなくなってしまうという設定のため、演技力も求められる役柄です。

  • グレーテル(ソプラノ)

ヘンゼルの妹。明るくて軽い「レッジェーロ」と呼ばれる歌手の役柄ですが、声が細すぎてもオーケストラに太刀打ちできない難しい役です。

  • ゲルトルート(メゾソプラノ)

ヘンゼルとグレーテルの母。メゾソプラノ歌手にしては高いh(1オクターブ上のシの音)の音が求められます。

  • ペーター(バリトン)

ヘンゼルとグレーテルの父。このオペラの中で唯一の男声です。

  • 魔女(メゾソプラノまたはテノール)

森に迷い込んだ子どもをお菓子にして食べている悪い魔女。メゾソプラノかテノールが演じます。

  • 眠りの精(ソプラノ)

森で迷ったヘンゼルとグレーテルの前に現れ、2人を眠らせる役柄です。

  • 露の精(ソプラノ)

『ヘンゼルとグレーテル』のあらすじを解説!

第1幕

ヘンゼルとグレーテルの兄妹は、今日もほうきや靴下を作る仕事をしています。しかし、2人はすぐに飽きてしまい、なかなか仕事は進みません。仕事を放り出してお腹がすいたとごねるヘンゼルに、グレーテルはミルクがあることを教えてしまいました。夢中になってつまみ食いをするヘンゼル。グレーテルはヘンゼルを止めて仕事に戻ろうと言いますが、ヘンゼルはグレーテルにダンスをしようと持ちかけます。

2人が楽しく踊っていると、母のゲルトルートが帰宅しました。仕事をサボって遊んでいる2人を見て、ゲルトルートは怒り心頭です。

ゲルトルートはほうきを持ってヘンゼルを追いかけ回します。しかし、その途中でほうきがミルクの瓶に当たり、ミルクが全部こぼれてしまったのです。ミルクを夕食にしようと思っていたゲルトルートは大慌て。ヘンゼルがその様子を見て笑ったので、ゲルトルートはさらにカンカンです。ヘンゼルとグレーテルは、怒ったゲルトルートに森へ苺を摘みに行くように命じられてしまいました。

疲れ切ってしまったゲルトルートは1人になると、貧しさを嘆きながらうたた寝をします。

そこへ、ヘンゼルとグレーテルの父・ピーターが帰ってきました。今日はほうきがたくさん売れたので、ピーターはたくさんの食べ物を持って帰ってきていたのです。ベーコンやバター、小麦粉を前に大喜びするゲルトルート。嬉しさのあまり踊り狂う2人でしたが、ヘンゼルとグレーテルが森へ行っていると知ったペーターは顔色を変えます。実は、森には子どもをお菓子にして食べてしまう恐ろしい魔女が住んでいるのです。それを知ったゲルトルートは激しく動揺し、ペーターと共に子ども達を探しに森へ向かいました。

第2幕

森にやってきたヘンゼルとグレーテル。2人は苺をカゴいっぱいに摘んでいましたが、遊んでいるうちに、せっかく摘んだ苺を全て食べ尽くしてしまいました。

その上、日が暮れて森はすでに真っ暗。ヘンゼルは怖がるグレーテルをわざと脅かして笑いますが、何と本当に帰り道がわからなくなってしまったのです。

白樺の木や返ってくるこだまなど、森のありとあらゆるものが恐ろしく見えて怯える2人。

すると遠くから何やら光のようなものが近づいてきます。

光の正体は眠りの精でした。眠りの精は怖がる2人に怖くないよと優しく声をかけ、砂のようなものを撒きました。砂をかけられた2人は、なぜかとても眠くなってしまいます。2人はいつも寝る前にささげている祈りの歌を歌い、眠りにつきました。

第3幕

朝になると、今度は露の精が2人を起こします。明るくなった森を見て2人は大喜び。その上、目の前にお菓子でできた家が現れたのです。お腹がぺこぺこの2人は、しばらく夢中になってお菓子を頬張っていました。

すると突然家の中から老婆が出てきて、お菓子を食べていた2人を捕まえてしまいました。この老婆は子どもたちをお菓子にして食べてしまうという魔女です。2人は何とか逃げ出そうとしますが、魔女が「ホークス、ポークス」と呪文を唱えると動けなくなってしまいました。

魔女はヘンゼルを檻に閉じ込め、グレーテルには食事の支度をさせます。グレーテルが食器を取りに部屋を出て行くと、魔女は「先にグレーテルから食べてやる」と呟きました。魔女はグレーテルにかまどに覗かせ、その拍子にかまどへ突き落とそうとしていたのです。

干しぶどうとパンを持ってやってきたグレーテル。魔女がヘンゼルに食事を与えている隙に、グレーテルは見よう見まねで「ホークス、ポークス」と呪文を唱えます。その瞬間魔法が解け、ヘンゼルは動けるようになりました。

魔女は、グレーテルにかまどの様子を見るように言いつけます。グレーテルが「やり方がわからないのでお手本を見せて」と言うと、魔女はイライラした様子でかまどの中を覗き込みました。グレーテルとヘンゼルは息を合わせて魔女の背中を押し、魔女をかまどの中に突き落としました。

魔女はかまどの中に落ち、焼け死んでしまいました。2人が踊りながら喜んでいると、激しい音とともにかまどが大爆発します。思わずうずくまるヘンゼルとグレーテル。2人が顔を上げると、そこには魔女に魔法をかけられていた子どもたちがいたのです。

子どもたちは眠りながら「やっと魔法が解けた」と言っています。ヘンゼルが「ホークス、ポークス!」と唱えると子どもたちは目を覚まし、ヘンゼルとグレーテルと一緒に輪になって踊りました。

そこへ2人を探しに来たゲルトルートとペーターがやってきます。ペーターはヘンゼルとグレーテルを抱きしめながら「苦しい時には神様が助けてくれる」と語りました。お菓子になってしまった魔女を囲み、みんなでハッピーエンドを迎えます。

『ヘンゼルとグレーテル』の有名な曲を紹介!

『ヘンゼルとグレーテル』の魅力といえば、物語の世界観に合った素晴らしい音楽です。その中でも人気の高い曲を厳選して解説していきますので、鑑賞の際の参考にしてみて下さい。

『ヘンゼルとグレーテル』より「踊りましょうよ」

仕事に飽きたヘンゼルとグレーテルが踊り出すシーンで歌われる二重唱です。民謡のような軽やかなメロディーが特徴で、見ている方も思わず踊りだしたくなります。このオペラの中にはドイツ民謡が引用されている箇所がありますが、『踊りましょうよ』はフンパーティングが作曲した箇所だそうです。ガラコンサートなどでも抜粋されてよく歌われる、『ヘンゼルとグレーテル』の中でも人気の高い曲です。

『ヘンゼルとグレーテル』より「夕べの祈り〜夢のパントマイム」

2幕の終盤、眠りの精の魔法で眠くなったヘンゼルとグレーテルは、『夕べの祈り』を歌います。この『夕べの祈り』のメロディーは「天使のライトモティーフ」と呼ばれ、作中に何度か登場するメロディーです。『夕べの祈り』の直後に『夢のパントマイム』という間奏曲が始まりますが、その中にも天使のライトモティーフが登場しています。

『ヘンゼルとグレーテル』より「もう永遠に呪いは解け」

魔女の魔法によって捕らわれていた子供たちが歌う曲です。まだ眠ったままの子供たちが、ヘンゼルとグレーテルに「やっと魔法が解けた」と感謝の気持ちを歌います。讃美歌のような美しいメロディーとハーモニーが特徴で、大人でも思わず涙してしまうような感動的なシーンです。

『ヘンゼルとグレーテル』は子どものオペラデビューにおすすめ!

『ヘンゼルとグレーテル』は上演時間もそれほど長くなく、楽しい音楽が盛りだくさんなので、小さな子どもでも十分に楽しめるオペラです。日本語での上演も行われていますので、子どものオペラデビューの演目としてもお勧めです。

ドイツ語圏では子供向けのプログラムとして、魔笛と並んで演奏されることが多いようです。

ぜひヘンゼルとグレーテルの世界を楽しんでみてください!

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