母音を同じ響きで歌う【ハンプソンの声楽マスタークラス】発声とボイトレ
どうも、こんにちは!声楽家&ブロガー&ボイストレーナーのとらよし(@moritora810)です。今回は世界的なバリトン歌手であるトーマス・ハンプソン氏のマスタークラスについて少しまとめておきたいと思います。私の今年の目標として、英語力を高めていきたいのですが、どうせなら音楽に関係あることを勉強していく過程で英語力が上がれば最高だと思い、この方法を思いつきました。
最近は本当に良い時代になって、Youtubeや各大学のホームページなどで声楽のマスタークラスが沢山アップロードされています。その中でも私はトーマス・ハンプソン氏のファンなので彼のマスタークラスを5年前ぐらいから頻繁に視聴していました。今回はマンハッタン音楽学校でのマスタークラスでやっぱり前にも言ってたことを強調してるので、やっぱりそこが大事なんだなぁ~と再認識して最近の練習に取り入れています。
そして折角なので皆さんにもシェアできたらと思い、まとめることにしました。是非参考にしてみてください!
トーマス・ハンプソン【バリトン】
まず最初にトーマス・ハンプソン氏がどんな方なのかです。(※上記は2020年時点の最新アルバム)
1955年6月28日、米国インディアナ州エルクハート生まれのバリトン歌手。南カリフォルニア大学でマルシャル・サンゲルとホルスト・ギュンターに師事。1981年、メトロポリタン歌劇場のオーディションで1位を獲得後、渡欧してデュッセルドルフのライン・ドイツ・オペラでデビューを飾る。1985年からチューリッヒ歌劇場で、モーツァルトのオペラなどを歌い、次第に国際的に注目を集める。その後1986年メト・デビュー、1988年ザルツブルク音楽祭出演など、オペラ歌手として世界的に活躍。一方、屈指のリート歌手としても知られており、とりわけシューベルトやマーラーの歌曲は高く評価されている。
2012/07/30 (2013/04/19更新) (CDジャーナル)
ハンプソン氏はイギリス出身と勘違いしてる人もいますが、生まれはアメリカなんですね。2020年の今年で65歳ですが、まだまだ現役で第一線で演奏している一流の演奏家です。
私がハンプソン氏のファンなのは、もちろん発声やスタイルが素晴らしいことだけでなく、リートの勉強をするときに必ず音源を参考にする演奏家の1人だからです。またハンプソン氏はドイツに留学してオペラ歌手としてデビューする前後でエリザベート・シュヴァルツコプフにも師事していたので、スタイルや言ってることがより理解しやすいからです。というのも私が大学院時代に3年間師事してたウーヴェ・ハイルマン先生と同門なので、共通することが沢山あるんですね。
ちなみにドイツにいるときハンプソン氏が出演するシューベルトのリサイタルとブラームスのドイツレクイエムのチケットを買ったんですが、どちらも気管支炎でキャンセルになってしまい聴けませんでした。(泣)いつかきっと聴きます!しかしそんな話は置いておいて、実際にレッスンでどういうことを述べているのかについてみていきましょう!
トーマス・ハンプソンマスタークラスinマンハッタン音楽学校(2019)
英語勉強中というか、ぶっちゃけ全然できないので少しニュアンスが違うところもあるかもしれませんが、そのあたりはご容赦ください。
57:00 sing the vowels just through the consonants(子音を通って、子音を使って母音を歌います)
57:50 just stay the same resonance (同じ響きを保って)
59:00 i din'nt change anything (私は何も変えていません)I want to sing right where I stopped singing the previous phrase and keep it (私は前にフレーズが止まったところから歌いたい、そしてそれをキープしたい)and the most important thing is well most importantly incredibly important (そして最も重要なことは、そう、本当に信じられないほどに最も重要なことは、) that you keep every vowel from every other vowel vibrating in with it(あなたはすべての母音を他の母音とともに振動するように保つことです) you want to separate especially Italian language (あなたはイタリア語を分けたい)but that the consonants must be on the same level as the vowel(しかし、子音は母音と同じレベルになければいけません)....ハンプソン氏が歌う.....it's all over the place(これだとあちこちに母音があります) I want involves him the same thing.(私は子音を同じように含めたい) think of the vowels the bottom of the vowel is the floor of your mouth (母音の底について考えると、それは口の底であり)and all of the energy in air goes up from there.(そしてそこから全ての空気とエネルギーが上がって来ます。 try that!(それを試してみてください!)
という感じのことを言っているわけですけれども、最も大切なポイントは母音が同じ振動であること、つまり同じ響きであることだと述べています。これはこの動画の中でも他の言い換えでsame resonance(同じ響きで)と述べています。
もうひとつ2015年のものも見て見ましょう。
トーマス・ハンプソンマスタークラスinマンハッタン音楽学校(2015)
20:20 keep it in the same resonance (同じ響きを保って)this the primary difference between singin and speaking(歌うことと話すことの主要な違いは) is that when we sing every vowel we sing has every other vowel in it (私たちが歌う時、全ての母音が全ての他の母音をそこに含んで歌うことです)and we can the resonance stays constant.(そして私たちは響きを絶え間なく保つことができます。)....ハンプソン氏が歌う.....
ハンプソン氏は、speakingで歌ってしまうとCNN(アメリカのニュース番組)のキャスターのようだと言っています。声楽を習ったことのある方であれば「A~E~I~O~U」や「U~O~A~E~I」というような発声練習をしたことがあると思いますが、これが一体何のための練習なのか、あるいはどの程度重要なのかについて触れられていません。
しかしこの動画を見ると分かる通り、この響きを見つけて、その響きをキープすること、母音をすべてつなげて歌うことが、歌うと言うこと、そもそも歌であると述べています。
ハンプソン氏のスタイル
今回取り出してはいませんが、ハンプソン氏は発声において、ポップスで言われるサイレンのような声や息の使い方をしています。同じ響きで音と音を行き来することや、低い響きではなくて高い響きで歌うといったことを述べています。
また歌い方の例で歌っている声を聴けば分かる通り、喉に落ちた声を完全に否定しています。これはバリトンやバスの人が最も陥りやすいミスというか、声の方向性だと思いますが、どんなときでも高いポジションと響きを保ったまま、どんなに低い音でも歌うことが重要であると再認識をさせられます。これと同じ話についてはQuasthoff thomas(トーマス・クヴァストフ)氏のマスタークラスでも同じ内容が述べられていますし、他の多くのオペラ歌手が同様の内容を述べていますね。
same resonance!(同じ響き・共振)
ともかく今回非常にベーシックなことではありますが、歌を歌うということは音程、母音、子音、アーティキュレーション、なにがこようともとにかく同じ響きで歌うということをマスターしなければならないということでしょう。
他にも色々メソードや技法や技術がありますが、この基礎的な部分が何よりも大切であるとの再認識です。なんにしても、歌の勉強には終わりがないですね!この情報が声楽を勉強する学生の皆さんのサンプルの1つとなれば幸いです。それではまた!