『カルメン』のあらすじと解説!G・ビゼー作曲
『カルメン』は、『椿姫』や『トスカ』などと並んで高い人気を誇るオペラです。初演から150年経とうとしている現在でも頻繁に上演されており、世界一上演されているオペラと言ってもよいでしょう。本記事では『カルメン』の登場人物とあらすじについて解説していきます。
『カルメン』とは?
『カルメン』はフランスの音楽家、ジョルジュ・ビゼーが作曲した全4幕のオペラです。同じフランスの小説家・メリメの小説『カルメン』を題材とし、アンリ・メイヤックとリュドヴィク・アレヴィが台本を担当しました。1875年にパリで初演されて以来、現在でも世界中で上演され続けています。
グランド・オペラとオペラ・コミック
フランスのオペラはグランド・オペラとオペラ・コミックに分類されます。グランド・オペラは歴史的なものを題材としたオペラで、イタリアでいう「オペラ・セリア」と同じような意味合いです。
一方、オペラ・コミックは喜劇的な内容を扱った「オペラ・ブッファ」のようなオペラです。オペラ・コミックは時代が進むにつれて、男女の愛憎劇などより生々しいものも含むようになりました。
酷評された『カルメン』の初演
『カルメン』の初演が行われたオペラ=コミック座は、喜劇的なオペラが多く上演される劇場でした。そのため、殺人のシーンを含む生々しいストーリーは観客たちに受け入れられず、『カルメン』の初演は大失敗に終わりました。憔悴したビゼーは、初演からわずか3ヶ月後に37歳の若さで亡くなってしまいます。
その後、ビゼーの友人エルネスト・ギローや名歌手たちの活躍により、『カルメン』は徐々に人気を高めて行きます。
『カルメン』の登場人物紹介
自由奔放なジプシー女や恋に溺れる真面目な青年など、『カルメン』の登場人物はリアリティのあるキャラクターばかりです。各登場人物のバックグラウンドや声の特徴などを知っておくと、登場人物たちの心の動きを感じやすくなります。
カルメン(メゾソプラノ)
ジプシー女。タバコ工場で女工として働いていましたが、喧嘩騒ぎを起こします。高音が得意で演技力があるメゾソプラノ歌手が適任です。
ドン・ホセ(テノール)
スペイン・ナバラ地方の出身。真面目で母親思いの青年。軽い声のテノール歌手よりも、感情をドラマチックに表現できる重い声のテノールが適任。恋に狂っていく青年を演じる演技力が求められる役柄です。
ミカエラ(ソプラノ)
元々は孤児だったが、ホセの母親に引き取られて育てられました。原作には登場しない人物で、カルメンのキャラクターを引き立てるために追加されたと言われています。
エスカミーリョ(バリトン)
花形闘牛士。酒場でカルメンに一目惚れし、カルメンに会うために密輸団のアジトを訪ねます。「カヴァリエ・バリトン」と呼ばれる、男らしく渋みのある声の歌手が適任です。
『カルメン』のあらすじと解説
『カルメン』第1幕
タバコ工場の前でたむろしている衛兵たち。そこへミカエラという少女がやってきて「ドン・ホセはいるか」と声を掛けます。ホセが不在だと知ったミカエラは一旦その場を去りますが、まもなく交代の時間になりホセが出てきました。
衛兵たちの楽しみは、タバコ工場の休憩時間に出てくる女工たち。そして中でも「カルメン」という女工が一番人気でした。カルメンがやってくると、衛兵たちはカルメンを口説こうとします。しかし、真面目なホセだけは全くカルメンに興味を示しません。
それが面白くなかったカルメンはホセを挑発し、持っていた赤い花を投げつけます。ホセはカルメンの無礼な態度に不快感を覚えながらも、美しいカルメンに惹かれていたのです。
女工たちが工場に戻ると、そこへミカエラが再びやってきました。
ミカエラは孤児だったため、ホセの母親に育てられました。ミカエラは母からの手紙をホセに渡すと、恥ずかしそうにしています。実は母からの手紙には「ミカエラと結婚するように」と書いていたのです。ホセは遠く離れた故郷の母に思いを馳せ、ミカエラと結婚することを承諾します。
その時、工場で女工たちの喧嘩騒ぎが起きました。喧嘩の主犯で相手に怪我を負わせたカルメンは逮捕されてしまいます。ホセは上官のズニガに、カルメンを牢屋に閉じ込めておくように命令されました。
カルメンは牢屋から逃げるために「セビリアの城壁近くにある居酒屋へ一緒に行こう」と巧みにホセを誘惑します。ホセはカルメンの誘惑に負け、何とカルメンを逃がしてしまうのです。
『カルメン』第2幕
リーリャス・パスティアの酒場。脱獄に成功したカルメンは仲間たちと酒を飲みながら騒いでいます。そこへ闘牛士の大スター・エスカミーリョが登場します。客たちがエスカミーリョの登場に沸き立つ中、エスカミーリョは美しいカルメンに目を留めました。エスカミーリョはカルメンを口説きますが、カルメンは相手にしません。
皆が去って一人になったカルメンの元に、ホセがやってきました。ホセはカルメンを逃がした罪で、長い間謹慎させられていたのです。ホセと会うことを待ち望んでいたカルメンは喜び、得意の踊りなどでホセをもてなします。
やがて、帰営のラッパが鳴りました。ホセが慌てて軍隊へ帰ろうとすると「お前の愛はその程度か」とカルメンは激怒します。ホセは以前カルメンに投げつけられた花を取り出し、「一目お前に見られただけで全てを奪われてしまった」とカルメンへの愛を語ります。
そんなホセに、カルメンは「愛しているなら自分の密輸団に入れ」と迫ります。動揺を隠せないホセ。その時、上官のズニガが現れました。ズニガはカルメンに「こんな身分の低い男が好きなのか」と言い、ホセを侮辱します。これに逆上したホセはズニガと決闘になりますが、カルメンの仲間である密輸商人たちが出てきてズニガを縛り上げてしまいました。
上司に背き、軍を裏切ってしまったホセにはもはや行き先がありません。カルメンたちの密輸団に入らざるを得なくなり、そのままカルメンたちについていくことになりました。
『カルメン』第3幕
カルメンたちは岩山で休憩を取っています。カルメンのホセに対する思いは完全に冷めきっており、いつも言い争いをしています。
カード占いをしている仲間のフラスキータとメルセデスの輪に入り、自分も占いを始めるカルメン。フラスキータとメルセデスには「若い男」や「大金持ち」の暗示がありますが、カルメンは何度占っても「死」の暗示しか出ません。カルメンは自分とホセが2人とも死ぬような、不吉な予感を覚えます。
カルメンたちが去った直後、ミカエラが岩山に現れました。ミカエラはジプシー女についていったホセを連れ戻しに、たった1人で密輸団のアジトにやってきたのです。ミカエラは怖がりながらも、必ずホセを連れ戻すと強く心に誓いました。
その時、近くから銃声が響き、ミカエラは驚いて岩陰に隠れます。発砲したのはホセでした。見張り役を任されていたホセは銃を構えながら、不審な人影に声を掛けます。人影の正体はエスカミーリョ。エスカミーリョはカルメンに会いに来た、とホセに告げます。さらにエスカミーリョは「カルメンは脱走兵と付き合っていたらしいが、もう別れたに決まっている」とホセを挑発。頭に来たホセはエスカミーリョに決闘を申し込みます。
ちょうどそこへ戻ってきたカルメンたちは、慌てて決闘を止めました。エスカミーリョはカルメンたちを闘牛に招待すると言い残し、颯爽とその場を去ります。まんざらでもないカルメンにホセが詰め寄ろうとした時、隠れていたミカエラが見つかり、皆の前に引き出されてしまいました。
ミカエラはホセに、母が毎日泣きながらホセの帰りを待っていることを伝えます。ホセに冷めていたカルメンは、「あんたはこの生活に向いていないから、故郷に帰れ」と言い放ちました。カルメンの気持ちがエスカミーリョに傾いていることを悟ったホセは、カルメンの元を離れようとしません。しかし、ミカエラから母が危篤であることを聞かされると激しく動揺し、「必ず帰ってくる」と言い残してカルメンの元を去っていきました。
『カルメン』第4幕
エスカミーリョの登場で沸き立つ闘牛場の前の広場。カルメンは群衆の中でエスカミーリョと愛を語り合っています。フラスキータとメルセデスはカルメンを呼び止め、ホセがここに来ているから逃げろと忠告しました。
カルメンの元にやってきたホセは、「やり直そう」と迫りますが、カルメンは「昔のことは忘れた」とホセを拒絶します。それでもしつこく復縁を迫るホセに嫌気が差したカルメンは、ホセからもらった指輪を地面に叩きつけました。
ホセは逆上し、持っていた短剣でカルメンを刺してしまいます。倒れて動かなくなったカルメンを見て、我に返ったホセは「俺がカルメンを殺した」と嘆きました。
『カルメン』の有名なアリアを紹介!
異国情緒を好んでいたビゼーの作品らしく、カルメンのアリアはどれもスペイン色溢れる曲ばかりです。曲名は知らなくても、どこかで耳にしたことがある曲も多いのではないでしょうか。その中でも特に有名なアリアを3つ紹介します。
「恋は野の鳥」(オペラ『カルメン』より)
「ハバネラ」と呼ばれるリズムが特徴的なカルメンのアリアです。オリジナルは全く違う雰囲気の曲でしたが、初演のカルメンを演じたセレスティーヌ・ガリ=マリエがビゼーに書き直しを要求したため『ハバネラ』が生まれたと言われています。多用された半音階が、妖艶な雰囲気を醸し出している曲です。
「お前が投げたこの花を」(オペラ『カルメン』より)
ホセが歌う唯一のアリアです。「私に対する愛はその程度か」と怒るカルメンに、ホセがカルメンをどれだけ愛しているかを語るシーンで歌われます。一番最後の歌詞「ジュテーム」はフランス映画でもよく登場するセリフです。歌手の歌い方や表情に着目すると、より感情が伝わってきます。
「闘牛士の歌」(オペラ『カルメン』より)
エスカミーリョのアリアで、2幕の冒頭で登場するカルメンのアリア『にぎやかな楽の調べ』に続いて演奏されます。合唱や合いの手が入るため、劇中で一番盛り上がるアリアと言っても過言ではありません。歌の中に何度も登場する「トレアドール」という言葉は「闘牛士」という意味です。
『カルメン』で人間ドラマを味わおう!
『カルメン』はよりリアルな人間ドラマをテーマにしているため、登場人物の心情がダイレクトに伝わってくるオペラです。音楽もエキゾチックで馴染みのあるものばかりなので、退屈することはありません。テレビドラマを見るような気持ちで、気軽に楽しんでみて下さい。
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